『牧人ひつじを』
1.牧人(まきびと)ひつじを 見守るその夜
はじめて天使は ノエルを伝えた
ノエル ノエル ノエル ノエル
主イエスは生まれた×2(※)
2.神の子主イエスは 貧しい姿で
この世に来られて 馬槽(まぶね)に生まれた
(※)を歌う
今日紹介するのは,「牧人ひつじを」という讃美歌です。クリスマスになるとお店やCMで流れたりするので(というか,クリスマスのBGMは,意外と讃美歌が多いのです!),クリスチャンでない方も,一度は聞いたことがあるかもです。
ノーエ~ル ノ~エール ノーエ~ル ノーエ~ル~♪・・・
では,それぞれの歌詞を確認していきましょう!まずは1番。牧人とは家畜のお世話をする人ですが,ここでは羊飼いのことを指します*1。なぜ羊飼いと分かるのかというと,この讃美歌の元ネタが,ちゃんと聖書に書いてあるからです。
さて、この地方で羊飼いたちが夜、野宿しながら羊の群れの番をしていた。
すると主の御使いが現れ、主の栄光が彼らをめぐり照したので、彼らは非常に恐れた。
御使いは言った、「恐れるな。見よ、すべての民に与えられる大きな喜びを、あなたがたに伝える。
きょうダビデの町に、あなたがたのために救い主がお生れになった。この方こそ主なるキリストである。あなたがたは、幼な子が布にくるまって飼葉おけの中に寝かしてあるのを見るであろう。それが、あなたがたに与えられるしるしである。」
するとたちまち、おびただしい天の軍勢が現れ、御使いと一緒になって神を賛美して言った、
「いと高きところでは、神に栄光があるように、地の上では、み心にかなう人々に平和があるように。」
御使いたちが彼らを離れて天に帰ったとき、羊飼いたちは「さあ、ベツレヘムへ行って、主がお知らせ下さったその出来事を見てこようではないか」と、互に語り合った。
このシーンは,私のお気に入りの聖書個所の一つです(笑)天使様が夜通し羊の番をしていた羊飼い(当時の庶民ですね)の前に,突然ピカーッと現れました(!)さぞビックリしたことだと思いますが,天使は言います。
「Good News(グッドニュース)だよ!ダビデの町に,救い主が生まれました。この方こそ,あなた方を救うキリストなんです!」
このダビデという名前,西洋美術に詳しい方はピンとくるかもしれません。そう,ミケランジェロの彫刻でお馴染みの,全裸のムキムキマッチョマンが,ダビデです。
この人は実は旧約聖書の超重要人物で,イスラエル王国の王様だった人です。とても戦に強い軍人王で,イスラエルの最盛期を築いた王として,当時のユダヤ人(イスラエルの住民)に尊敬されていました。そして,伝統的にキリストはダビデの子孫から出る,と信じられていました。イエスがダビデの町と呼ばれていた,ベツレヘムでお生まれになったのにも,ちゃんとした意味があったんですね~
ちなみに,イエスには様々な尊称があります。代表的なものはキリストやメシアがありますが,中には「イスラエルの王様」というものもあります。彼は実際にイスラエルの王になったことは一度もありません(イエスの時代は,ヘロデという人が王でした)。しかし,それでもこう呼ばれるのは,イエスがダビデの子孫であるという信仰が前提としてあるのです。
少し話はそれますが,三国志の劉備という人をご存知でしょうか?彼は後漢の群雄割拠の動乱に身を起こし,後漢滅亡後は蜀漢を建てて,後漢の後継者を名乗ります。彼はもともとはわらじ売りだったのですが,出自は尊く,漢景帝皇子中山靖王劉勝(長いw)の子孫だったそうです。三国志は,後漢の正当な後継者劉備vs後漢の奸臣(悪い家臣)曹操という一面があるのですが,これはイエスとヘロデについてもほぼ同じことが言えます。すなわち,イスラエルの正統な血筋を引くイエスvs王の血筋を引かない暴君ヘロデという構図です。あるいは,日本史に詳しい方であれば南北朝に似ていると思われたかもしれません。しかし,いずれにせよ聖書によれば,あくまでも正統派なのはイエスなのです。そして,そのイエスの誕生が羊飼いに告げ知らせたのでした。ノ~エ~ルノ~エ~ル,のノエルとは,フランス語でクリスマス=主の降誕のことを指します。
少し長くなったので今回はここまでにします。続きは後編に書きます。お楽しみに~!!!
*1 天使がノエルを伝えたのが羊飼いであったことには,実は隠された意味があります。分かりますか~?是非考えてみてください。(ヒント:迷える子羊)